T邸リノベーション — 家具を主語にするために、空間を引いた

T邸LDK全景 — キッチンとアンティークキャビネット
LDK全景。白とグレーの背景に、アンティークキャビネットとウォールナットテーブルが浮かび上がる

物件は決まっていた。次にやるべきことは、この空間にふさわしい家具を選び、その家具が主役になるマテリアルで空間を満たすこと。壁・床・建具のカラーを一から設計し、3ヶ月かけて「家具のための背景」をつくった。

設計の起点 — 家具から逆算する

  • 先に家具を選定。ウォールナットの一枚板テーブル、アンティークのガラスキャビネット、ホワイトのソファ
  • 家具の素材感と色味を基準に、壁・床・照明のトーンを逆算して決めた
  • 空間が家具を引き立てる「地」になるよう、背景の彩度と主張を徹底的に抑えた

マテリアルの設計

  • 壁面を白に統一し、床材はグレートーンに。家具の木目や金属の質感を「浮かせる」ための選択
  • アンティークキャビネットの天板には大理石。経年変化した木枠との対比が、素材の時間差を見せる
  • リビングのラグ、カーテン、ソファもすべてニュートラルトーンで統一。家具の色が空間の中で唯一の主張になる
  • 階段ホールのアーチ開口とペンダントライト——動線の中にも、選んだ照明器具が活きるカラー設計を施した
  • 各部屋ごとに微妙にトーンを変え、同じ「抑える」でも単調にならない奥行きをつくった
T邸リビング — ウォールナットテーブルとソファ
リビング全景。ウォールナットの一枚板が、抑えた空間の中で存在感を取り戻す

なぜこう設計したか

カラー設計 — 壁面を白、床をグレートーンに揃えたのは、家具の木目や金属の質感を「浮かせる」ため。背景の彩度を落とすことで、ウォールナットの茶やキャビネットのエイジング仕上げが、補色的に際立つ。

照明 — キッチンはトラックライトによるスポット配灯に。光が当たる場所=見てほしい場所。階段ホールにはガラスのペンダントライトを選び、灯りそのものが空間の表情になるようにした。

T邸キッチン詳細 — 白い設備と枝物のグリーン
キッチン詳細。白い設備に枝物のグリーンが呼吸を与える。キャビネット天板の大理石が光を受ける

配置 — アンティークキャビネットをキッチンアイランドの位置に据えたのは、動線の中心に「時間の蓄積」を置くため。新しいキッチン設備との対比が、空間に奥行きを与える。

T邸階段ホール — ペンダントライトとアーチ開口
階段ホール。ペンダントライトとアーチ開口。カラーを抑えた壁面が、照明器具と木の手すりを引き立てる

フルリノベーション — 外観から内部まで

今回はフルリノベーション。外壁の貼り替えから内部のマテリアル設計まで、建物全体を手がけた。ただし設計の軸は一貫している。内側に置く家具から逆算し、その家具が最も活きるトーンを、外壁も含めたすべてのマテリアルに通したこと。

T邸外観 — フルリノベーション後
外観。外壁を貼り替え、内部のトーンと呼応するニュートラルな佇まいに

空間にできる最良の仕事は、そこに置かれるものを黙って引き立てること。3ヶ月かけてやったのは、足すことではなく、家具が呼吸できる余白をつくることだった。

住まいのリノベーションのご相談は、釧路BASE9にて承っています。